【師匠シリーズ】海
386海 ◆oJUBn2VTGEウニ2006/12/02(土)14:22:40ID:Q8VwWIU/0大学2回生の夏。俺は大学の先輩と海へ行った。照りつける太陽とも水着の女性とも無縁の、薄ら寒い夜の海へ。俺は先輩の操る小型船の舳先で震えながら、どうしてこんなことになったのか考えていた。眼下にはゆらゆらと揺らめく海面だけがあり、その深さの底はうかがい知れない。ときどき自分の顔がぐにゃぐにゃと歪み、波の中にだれとも知れない人の横顔が見えるような気がした。遠い陸地の影は不気味なシルエットを横たえ、時々かすかな灯台の光が緞帳のような雲を空の底に浮かび上がらせている。「海の音を採りに行こう」という先輩の...