【師匠シリーズ】雲 後編
407:雲 後編 ◆oJUBn2VTGE:2013/09/06(金)22:25:48.72ID:kIaSDyGu0外は雨だ。額に、顔に、大粒の雫がかかる。雨脚はさほど強くないが、空を見上げようとしても、なかなか目を開けられない。それ以前に、真っ暗な空にはどれほど目を凝らそうとも何も見えなかった。目を細めていた師匠が「くそっ」と短く叫ぶと、家の中に取って返した。一分と経たずに飛び出してきたその手には、車の鍵が握られていた。「来い」師匠は僕にそう言うと、駐車場へと駆け出す。「こんな雨の中、どこ行くんです」僕は追いかけながら叫ぶ。心臓がドクドク言っている。さっきまでの穏やかな時間はどこに行った? ...