師匠シリーズ

【師匠シリーズ】デス・デイ・パーティ

420:デス・デイ・パーティ◆oJUBn2VTGE:2010/09/12(日)00:06:19ID:eR8sQKUR0大学一回生の冬。俺は当時参加していた地元系のオカルトフォーラムの集まりに呼ばれた。いや、正確には見逃していたのかそのオフ会の情報を知らず、家でぼーっとしていたところに電話がかかってきたのだ。「来ないのか」京介というハンドルネームの先輩からのありがたい呼び出しだった。俺は慌てて身支度をして家を飛び出す。時間は夜八時。向かった先はcoloさんというそのフォーラムの中心的人物のマンションで、これまでも何度か彼女の部屋でオフ会が開かれたことがあった。ドアを開けると、もうかなり盛り上がっ...
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【師匠シリーズ】列

255:列 ◆oJUBn2VTGE:2010/09/04(土)23:07:32ID:e+ha2oiV0師匠から聞いた話だ。大学に入ったばかりの頃、学科のコースの先輩たち主催による新人歓迎会があった。駅の近くの繁華街で、一次会はしゃぶしゃぶ食べ放題の店。二次会はコースのOBがやっているドイツパブで、僕は黒ビールをしたたかに飲まされた。三次会はどこに行ったか覚えていない。ふらふらになり、まだ次に行こうと盛り上がっている仲間たちからなんとか逃げおおせた頃には夜の十二時近くになっていただろうか。同じようにふらふらと歩いているスーツ姿の男性とそれにしなだれかかるような女性、路上で肩を組んで歌っている大学...
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【師匠シリーズ】もういいかい

122:もういいかい ◆oJUBn2VTGE:2010/08/29(日)21:20:14ID:zEqctehg0師匠から聞いた話だ。大学二回生の春だった。休日の昼間に僕と加奈子さんはとある集会所に来ていた。平屋のさほど大きくない建物だ。バイト先の調査事務所の所長から話を聞きにいくように指示されただけで、なんの準備もなしに渡された地図を頼りにやって来たのだった。迎えてくれたのは五十年配の女性。玄関から入ってすぐの襖を開けると十畳ほどの日本間があり、そこへ通された。地区の寄り合いに利用される集会所で、鎌田さんというその女性はそこの鍵を管理しているらしい。その鎌田さんのご主人が地区長をしていて、また...
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【師匠シリーズ】なぞなぞ

708:なぞなぞ ◆oJUBn2VTGE:2010/08/20(金)23:41:34ID:kFozVi3d0大学四回生の冬だった。俺は仲間三人と少し気の早い卒業旅行をした。交代しながら車を運転し、北陸まわりで関東へと入った。宿の手配もない行き当たりばったりの旅で、ビジネスホテルに泊まれれば良い方。どこも満室で、しかたなく車の中で寒さに震えながら朝焼けを見たこともあった。目的はない。ただ学生時代特有の怠惰で無為な時間の中に、もう少し全身を沈めていたかった。みんな多かれ少なかれそんな感傷に浸っていたのだと思う。ある街に着いた時、俺はふと思いついた。知り合いがこのあたりに住んでいたはずだ。携帯電話で...
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【師匠シリーズ】通夜

864通夜 ◆oJUBn2VTGEウニ2009/11/14(土)00:07:01ID:vynNPKLZ0女の子はその暗い廊下が好きではなかった。かび臭く嫌な匂いが壁や床に染み付いている気がして、そこを通るときにはどうしても息を殺してしまう。その廊下の先にはおじいちゃんの部屋があった。女の子が生まれたころからずっとそこで寝ている。足が悪いのだと聞いたけれど、どうして悪くしたのかは知らなかった。昔は大工の棟梁をしていたと自慢げに話してくれたことがあったから、きっと高いところから落っこちたんだろうと勝手に思っていた。部屋を訪ねるとおじいちゃんはいつも喜んでくれて、お話をしてくれたりお菓子をくれたり、...
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【師匠シリーズ】四つの顔

582:四つの顔 ◆oJUBn2VTGE:2009/10/11(日)22:41:09ID:e4PX3/wx0大学一回生の冬だった。そのころ俺は大学に入ってから始めたインターネットにはまっていて、特に地元のオカルト系フォーラムに入り浸っていた。かなり活発に書き込みがあり、オフ会も頻繁に行われていたのだが、その多くは居酒屋で噂話や怪談話の類を交換して楽しむという程度で、一応「黒魔術を語ろうという」というテーマはあったものの、本格的にその趣旨を実行しているのはごく一部の主要メンバーだけという有様だった。俺もまた黒魔術などという得体の知れないものを勉強しようという気はさらさらなく、その独特のオカルティ...
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【師匠シリーズ】刀

332:刀 ◆oJUBn2VTGE:2009/10/02(金)22:17:41ID:o7OYvvFV0師匠から聞いた話だ。大学二回生の春の終わりだった。僕は師匠のアパートのドアをノックした。オカルト道の師匠だ。待ったが応答がなかった。鍵が掛かっていないのは知っていたが、なにぶん女性の部屋。さすがにいつもなら躊躇してしまうところだが、ついさっきこの部屋を出て行ったばかりなのだ。容赦なくドアを開け放つ。部屋の真ん中で師匠は寝ていた。その日、朝方はまだそれほどでもなかったのに昼前ごろには急に気温が上がり、昨日の雨もあってか、猛烈に蒸し暑かった。その部屋はお世辞にもあまりいい物件とは言えず、こういう寒...
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【師匠シリーズ】木

788:木 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金)22:16:46ID:4o0HgrnU0大学二回生の春だった。近くを通ったので、オカルト道の師匠の家にふらりと立ち寄った。アパートのドアをノックしてから開けると、部屋の中では師匠が畳の上にあぐらをかいてなにかをしきりに眺めている。近づいていくと、後ろ向きのままの師匠と目が合った。「よお」卓上にしては大きく、姿身にしては小さい中途半端な大きさの鏡だった。軽く嫌な予感がする。「鏡ですか」と言わずもがなのことを訊くと、「うん」と頷いたきり鏡の中の視線を外して正面をまじまじと見つめている。俺はその横に座ってそんな師匠をじっと観察する。なにを...
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【師匠シリーズ】先生 後編

748:先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金)21:55:07ID:4o0HgrnU0先生は手にチョークを持ったまま口を開く。「あなたは一昨日の夜、まずシゲちゃんと一緒に二人で洞窟に入った」黒板には洞窟の絵と、丸と線だけの人間が二人描かれている。その上には①というマーク。「一本道の洞窟の奥には顔入道の岩があって、お坊さんのミイラがあるというその先には行けなかった。二人は怒り出す寸前みたいな顔を見てから、入り口へ戻った」行って戻った矢印が洞窟の中に描かれる。そして「怒る前」と走り書き。「その後、タロちゃんが入れ替わりに一人で洞窟に入って行った」②として、もう一人の丸と線...
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【師匠シリーズ】先生 中編

661:先生 中編 ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金)22:45:47ID:4kHIdhSj0その日は特に陽射しが強くてやたらに暑い日で、家で飼っていた犬も地べたにへばりついて長い舌をしんどそうに出し入れしていた。それでも僕ら子どもには関係がない。夏休み学校から帰ってきて昼ご飯をかきこんでから午後にシゲちゃんたちと合流すると、裏山に作った秘密基地に連れて行かれた。そして木切れや布で出来た狭い空間に顔を寄せ合うと、シゲちゃんが神妙な顔で言う。「こいつももう俺たちの仲間と認めていいんじゃないか」僕のことだ。これで何度目だろう。こんなことをシゲちゃんが言い出した時は、決まって「秘密の...