師匠シリーズ

【師匠シリーズ】テレビ

72:ウニ◆oJUBn2VTGE:2013/01/26(土)22:13:16.61ID:Zc2Cu2zX0次のお話は、一昨年の冬に別サークルの同人誌に寄稿したものです。今夜もこの一話だけで終わりです。73:テレビ◆oJUBn2VTGE:2013/01/26(土)22:15:25.10ID:Zc2Cu2zX0師匠から聞いた話だ。大学二年の夏だった。オカルト道の師匠であるところの加奈子さんが、人からもらったという大量のそうめんを処分しようと、「第一回大そうめん祭り」と称して僕を呼びつけた。痛むようなものでもないし、そんなに焦って食べなくてもいいのに、と思っていたのだが実際に山と積まれたその袋の量を...
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【師匠シリーズ】祖母のこと

27:ウニ ◆oJUBn2VTGE:2013/01/19(土)23:10:04.59ID:ClDTjW9z0・A・ 次のお話は、同人誌『師匠シリーズの3』に載せたものです。今夜は1作だけです。では。28:祖母のこと ◆oJUBn2VTGE:2013/01/19(土)23:11:03.32ID:ClDTjW9z0師匠から聞いた話だ。その女性は五十代の半ばに見えた。カーキ色の上着にスカート。特にアクセサリーの類は身につけておらず、質素な装いと言っていい。「こんなお話、していいのか…… ごめんなさいね。でも聞いていただきたいんです」癖なのか、女性は短くまとめた髪を右手で押さえ、話しにくそうに口を開く...
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【師匠シリーズ】空を歩く男

668:空を歩く男 ◆oJUBn2VTGE:2012/09/01(土)23:03:50.75ID:itFWmvQ50(この話は、2011年の夏コミの時に、別サークルの同人誌に寄稿したものです)師匠から聞いた話だ。大学一回生の春だった。そのころ僕は、同じ大学の先輩だったある女性につきまとっていた。もちろんストーカーとしてではない。初めて街なかで見かけたとき、彼女は無数の霊を連れて歩いていた。子どもの頃から霊感が強く、様々な恐ろしい体験をしてきた僕でも、その超然とした姿には真似の出来ない底知れないものを感じた。そしてほどなくして大学のキャンパスで彼女と再会したときに、僕の大学生活が、いや、人生が決...
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【師匠シリーズ】連想Ⅰ

541:連想Ⅰ ◆oJUBn2VTGE:2012/08/18(土)22:32:27.18ID:qKV0Rmwv0師匠から聞いた話だ。「二年くらい前だったかな。ある旧家のお嬢さんからの依頼で、その家に行ったことがあってな」オイルランプが照らす暗闇の中、加奈子さんが囁くように口を動かす。「その家はかなり大きな敷地の真ん中に本宅があって、そこで家族五人と住み込みの家政婦一人の計六人が暮してたんだ。家族構成は、まず依頼人の真奈美さん。彼女は二十六歳で、家事手伝いをしていた。それから妹の貴子さんは大学生。あとお父さんとお母さん、それに八十過ぎのおばあちゃんがいた。敷地内にはけっこう大きな離れもあったんだ...
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【師匠シリーズ】風の行方 後編

225:風の行方 後編 ◆oJUBn2VTGE:2012/05/19(土)23:19:25.47ID:13YZ4scB0それから僕らは、師匠の感じ取る風の向かう先を追い続けた。それは本当の意味で、目に見えない迷路だった。「あっち」「こっち」と師匠が指さす先にひたすら自転車のハンドルを向け続けたが、駅前の大通りを通ったかと思うと、急に繁華街を外れて住宅街の中をぐるぐると回り続けたりした。かと思うと川沿いの緑道を抜け、国道に入って延々と直進したりと、法則もなにもなく、その先に終わりがあるのかまったく見えなかった。そしてまた風に導かれるままに繁華街に戻ってきて、いい加減息が上がってきた僕が休憩しまし...
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【師匠シリーズ】風の行方 前編

183:風の行方 ◆oJUBn2VTGE:2012/05/11(金)21:09:55.96ID:wBpB+Oun0師匠から聞いた話だ。大学二回生の夏。風の強い日のことだった。家にいる時から窓ガラスがしきりにガタガタと揺れていて、嵐にでもなるのかと何度も外を見たが、空は晴れていた。変な天気だな。そう思いながら過ごしていると、加奈子さんという大学の先輩に電話で呼び出された。家の外に出たときも顔に強い風が吹き付けてきて、自転車に乗って街を走っている間中、ビュウビュウという音が耳をなぶった。街を歩く女性たちのスカートがめくれそうになり、それをきゃあきゃあ言いながら両手で押さえている様子は眼福であったが...
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【師匠シリーズ】トランプ 前編

890:トランプ 前編 ◆oJUBn2VTGE:2012/02/25(土)23:24:13.77ID:KKcRHKWO0師匠から聞いた話だ。大学一回生の冬だった。その日僕は朝から小川調査事務所という興信所でバイトをしていた。バイトと言っても、探偵の手伝いではない。ただの資料整理だ。そもそも僕は一人で興信所の仕事はできない。心霊現象絡みの依頼があった時に、その専門家である加奈子さんの助手をするだけだ。助手と言っても、僕のオカルト道の師匠であるところの彼女は、ほとんど一人で解決してしまうので、なかば話相手程度にしか過ぎないのではないかと、思わないでもなかった。「おい、どうした」声に振り向くと所長の...
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【師匠シリーズ】巨人の研究  中編

907:巨人の研究 中編 ◆oJUBn2VTGE:2012/02/18(土)22:23:48.00ID:fQUWiUGe0次の次の日、僕は昼前に師匠の家に行った。月曜日だった。すでに身支度をしていた師匠はすぐに表へ出て来て、「自転車で行こう」と言う。そして僕の自転車の前カゴに荷物を放り込むと、自分は後輪の軸の所に足をかけた。僕の肩に乗った手のひらから一瞬、体温が移る。「まずタカヤ総合リサーチだ」と頭越しに指が突き出される。「はいはい」と二人分の体重を運動エネルギーに変えるべく全力でペダルを踏む。しばらく黙々と自転車をこいでいると、ふいに師匠が言った。「なんか視線を感じる」警戒しているような声。...
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【師匠シリーズ】巨人の研究  前編

672:巨人の研究 前編 ◆oJUBn2VTGE:2012/02/03(金)22:00:55.87ID:WiPg9lRs0師匠から聞いた話だ。大学二回生の夏。ある寝苦しい夜に、所属していたサークルの部室で数人の仲間が集まり、夜通しどうでもいいような話をしてだらだらと過ごしていた。酒も入っていたし、欠席裁判よろしく嫌いな部員の話や色恋沙汰に関する話が主だったが、その中である同い年の女の子がふいに流れを断ち切って、こんな話を始めた。「そういえば、このあいだ変なもの見たんだよね」「変なって、どんな」「なんていうか、小人?」と自分で言いながら小首を傾げている。彼女が言うことには、数日前の夕暮れ時に街を...
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【師匠シリーズ】M.C.D.

362:M.C.D. ◆oJUBn2VTGE:2012/01/02(月)23:40:12.97ID:93PkLSJW0師匠から聞いた話だ。大学一回生の夏だった。午前中の講義が終わり、大学構内の喫茶店の前を通りがかった時、僕のオカルト道の師匠が一人でテーブル席に陣取り、なにやら難しい顔をしているのが目に入った。「なにを見てるんですか」近づいて話かけると、手にした紙切れを天井の蛍光灯にかざして見上げるような仕草をする。「どうしようかと思ってな」つられて僕も姿勢を低くして下から覗き込むと、どうやらなにかのチケットのようだ。横を向いた髑髏のマークが全面に描かれている。「M.C.D.……?」髑髏の中にそ...