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【洒落怖】工事現場

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273 :経験者:2001/08/08(水) 12:33
病院の現場事務所で待ち合わせる事にして、I君を待っていると、時間通りに来てくれた。
結構深刻そうな顔をしている。
「どうした?」と俺はI君の顔を見ながら聞いてみた。
するとI君は、「あの事故からへんなんですよ」と言って話しはじめた。
「事故の直後は、こんな夢は見なかったんですが、ここんとこ毎晩同じ夢なんですよ」
おお何か面白そうだ。俺はそう思い続きを聞いた。
「夢で、あのお爺さんが出て来るんですよ。それが、工事途中のあの現場に居るんです」
居るかもな。そう考えながらも話を聞いてると、とんでもない事を言いだした。
「現場であのお爺さんが、Mさんの背中にしがみついてるんですよ」
それを聞いて、俺は思わず叫んでしまった。
「何で俺なの?ねえ何でよ」。
たじろぎながらI君は、「いや、俺にもまったく分からないんですよ」。
そりゃそうだ。原因がわかれば、俺の所にも来ないだろうしな。
だからといって、そんな事言われても困る・・・
「どうしてもMさんの事が気になって、今日訪ねて見たんですけどね」
それからI君は、現場で線香をあげたいからつき合ってもらたいと、俺に頼んできた。
そんな話をされた後に断れるほど俺は強くはない。
今から向かえば、6時過ぎには現場には行けるだろうから、すぐ向かう事にした。

274 :経験者:2001/08/08(水) 12:35
現場に向かう車の中で、I君が見たと言う爺さんの話を聞いてみた。
「なあ。I君が見たっていう爺さんなんだけどさ、どんな感じの人なの?」
するとI君は、夢で何度も見ている事から、詳細に話してくれた。
髪の形、年齢層、着ている物、冷や汗ものだった。俺が最初に話をした爺さんだ・・・

現場に着くまでの間、他の話で紛らわせる事にした。
そして現場に着き、I君は埋葬場所に向かった。
俺のほうはどうしても気になり、外装の完成した風呂場に向かった。
骨壺を移動した事がいけなかったのかな。そう思いながら風呂場を見渡した。


275 :経験者:2001/08/08(水) 12:36
しばらくすると、外からI君の声がした。
「Mさん終わりました。帰りましょう」
それを聞いて俺は、「おー」と返事をして、外に向かおうとした。
その時、突然足が動かなくなった。どう説明していいのか、こんな感じは初めてだった。
簡単に言うと、(プチ金縛り状態)動かん。
しだいに腰まで重くなってきて、とうとうその場に倒れ込んでしまい、焦りながら何度も立ち上がろうとした。
腰のほうに目を向けても何も見えない。
すると、カタンと音がした。
音のするほうを見ると、立てかけてあったスライダー(多段ばしご)が、俺の背中に向かって倒れてきた。
直撃はしたものの、背中だったためたいしたダメージはなかった。

スライダーの倒れる音に気が付いてI君が来てくれた。
「大丈夫ですかっ」と言いながら、I君は俺を助け起こしてくれた。
ただおかしかったのがI君で、俺を助け起こした後に、
『どうしたんですか』とは聞かずに、「Mさんも線香あげたほうがいいですよ」と言ってきた。
気にはなったが、I君の言う通りに俺も線香をあげることにした。
線香をあげたあと、俺とI君は現場を後にすることにした。

276 :経験者:2001/08/08(水) 12:38
その帰りの車中で、I君がいきなり俺に謝り始めた。
「すいません。俺のせいで怪我させて」
「気にしないでいいよ」と俺は笑いながらI君に言った。
するとI君は、「さっき本当は、Mさんの背中にお爺さんが乗ってたんです」。
それを聞いたとき俺は、思わず急ブレーキをかけてしまった。

ビビった。近くのコンビニに車を止めて、俺はI君に聞いてみた。
「俺と爺さんは何か関係あるの?」
するとI君は、
「自分でもわからないんです。ただMさんは、あの現場には近寄らないほうがいいような気がします」
そう言われて俺は素直に、完成するまで建物内に入る事はしなかった。

老人ホームは完成した。
大きな現場ではなかったが、それでも事故の件数は俺が担当したなかでは一番多かった。
29件の内、28件が風呂場だった。

余談だけど、骨壺の件は現場関係者しか知らない。
もう誰も、あの場所に骨壺が埋まっている事など知らない・・・

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