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【洒落怖】廃墟探検

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845 :841 ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:15
小学生の頃、俺は友達と2人で廃屋探検に行きました。
ターゲットは町内でも田舎な地域にある家で、結構新しいのに無人。
前の住人が自殺したとか殺されたとか、そういう噂が立っている所でした。
学校が終わってすぐその家へ向かう段取りだったのに、
俺が職員室に呼ばれて説教を食らっていたせいで、出発がずいぶん遅れました。
しかもコンビニ寄って立ち読みしてたりで、現場に到着したのは夕方6時頃。
広い産業道路沿いの一角の、塀に囲まれた一軒家です。
周囲の空き地はススキが茂り放題で、いかにも空き家って雰囲気。
俺は「遅くなると怒られるよなー」とチキン入ってたんですが、友達はやる気満々です。
軽々と塀を乗り越えた友達は、早速玄関のドアをガンガン引っぱりました。でも開かない。
二人で手分けして入る所を探したんですが、
窓は雨戸用のシャッターが閉まっているし、裏口にはカギが掛かっているしで、とても入り込めそうにありません。

この時点で俺は半分諦めてたんですけど、相変わらず全力投球な友達に気を遣い、
一応やる気のカケラぐらいは見せておこうっていう軽い気持ちで、
「引いてダメなら押してみろってな」なんて言いながら、玄関のドアを押してみました。
すると信じられないことに、あっさりと開きやがったんです。
「マジか!ウッソやろぉ!」
友達がダッシュで駆け寄ってきました。ボルテージは最高潮です。
「これは何かあるでぇ・・・」などととつぶやきながら、余裕の土足で上がり込んで行きます。
しかたなく、俺も後から家の中に入りました。

847 :841 ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:16
初秋で外は結構明るかったのに、家の中は薄暗いと言うよりほとんど真っ暗でした。
俺の持ってきたキーホルダーの豆球が頼りです。探検ムードは盛り上がるばかり。
「うわ!」
突然、ある部屋の入り口で、先行していた友達が後ろに飛び退きました。
恐る恐る中を覗くと、部屋の真ん中に人影が立っていました。
俺らとタメぐらいの子供が、懐中電灯を持ってこっちをジーッと見ています。
白っぽい服を着た、見慣れない顔の女の子でした。
「お前、誰や?」
友達が聞きました。でも返事はありません。
「なにしてるんや」
今度は俺です。
「探検」
その子がポツリと言いました。
「何時ここに入ったんや?」
また友達が聞きましたが、女の子はそれを無視して、
「ここはまだ入り口なの。でもこの奥に・・・」と、そこで言葉を切り、部屋の奥にあるドアを指さしました。
「一緒に行きましょう」
それを聞いた友達は、その扉に向かって突き進んで行きます。
俺は気味が悪かったけど、仕方なくあとに続きました。
女の子が俺の後ろからついてくる気配がしました。

849 :841 ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:17
ドアを開けると、机と椅子が置いてあるだけの書斎みたいな部屋でした。
別に変わった感じはしません。
「なんも無い、フツーの部屋やな」
友達が言いました。
「残念~」
突然、女の子が妙に明るい声を出し、俺はなぜかゾクっとしました。
「ここのアイテムは私がゲットしましたぁ~」
そんな風に言って、ポケットから写真を何枚か取りだしました。
「なんやそれ?」
「壁に貼ってあったの」
そう言って見せてくれた写真は、おっさんが何人か写ってる写真でした。
ただ、どの写真も背景がべったりと黒一色に塗りつぶされていて、それが不気味でした。
「うふふふ・・おかしな写真よねッ」
女の子の妙に明るいノリも気になります。
「次はこっちよ」
俺たちは、女の子に引っ張られる形で家の中をうろつきました。
どの部屋もほとんど真っ暗なんで、俺の小さいライトで届く範囲しか見えません。
女の子はなぜか懐中電灯を点けようとしない。
それでも目が慣れてくると、なんとなく様子がわかるようになってきました。
なんて事のない、普通の部屋ばっかりでした。


850 :841 ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:18
いい加減飽きてきて、『もう帰ろう』と言いかけたところで、廊下の突き当たりのドアの前に来ました。
そのドアが変です。
よく見ると、ドアの上の方、ちょうど小窓がありそうな辺りに、分厚い木の板が釘で打ち付けてあります。
ノブの所には、蝶つがい式の鍵と南京錠。
まるで、何かを閉じこめているような様子です。
南京錠は外れていたんで、俺が鍵を外してドアを開けました。
長い廊下が先に続いていました。
両側は板が打ち付けてあるばかりで、外の様子は全然見えません。
「渡り廊下かな?」
俺、友達、子供の順で、暗い廊下を先に進みました。
俺の後ろには友達がいるはずなのに、気配をあまり感じません。
ずいぶん離れて女の子が付いてきているようでした。時折、後ろから声が聞こえます。
妙に浮かれた口調で何か喋っていますが、内容はわかりません。
突き当たりにドアがありました。
さっきのと同じようなドア。小窓に板が打ち付けてあって、鍵も付いています。
ただ、こっちの鍵は、引きちぎられたように壊れていました。
それを見た時に感じたのは、ものすごくイヤな予感です。
それなのに、俺は一気にドアを開けたんです。

851 :841 ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:19
真っ黒な部屋でした。
真っ暗じゃなくて真っ黒。
壁や床、天井もそうだったと思うけど、全てが真っ黒に塗りつぶされた部屋です。
隅の方に、写真が立てかけてありました。
遺影みたいな感じの人の写真。でも、はっきりとは見えませんでした。
それよりも目を奪われたのは、ドアから見て右側の壁。
そこに押入があって、こっち側の戸が開いていました。
中にはキノコが生えています。ヌルヌルとした粘液に包まれた、赤黒い小さなキノコ。
それがびっしりと、押入の床や奥の壁まで覆い尽くしていました。
押入の床も壁も、ヌメヌメと光るゲルにまみれて、内臓みたいに見えました。
出来の悪い悪夢のような光景に、吐き気を覚えながらも、
それに魅入られるかのように、いつしか俺は中に足を踏み入れようとしていました。
「あ~あ」
突然、耳元で声が聞こえました。
「入ったら死んでまうのに」
低い男の声でした。
背筋が急にゾクッとして振り向くと、目の前に友達の顔がありました。
何とも言えない表情です。
悲しそうな、嬉しそうな、でもどこを見ているのか判らない虚ろな目。
部屋の中の光景とは違った意味で、俺は吐き気をもよおしました。

852 :841 ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:20
それでも勇気を振り絞って、目の前の友達に声をかけようとしました。
「おい・・」
その時、足首のあたりがヒンヤリとした何かに包まれました。
そのままグッと締め付けてくる、ヌルリとした柔らかい感触。
何かが部屋の中から俺の足首を掴んでいる!
「うワァアァァア!」
俺は思わず悲鳴を上げ、友達を押しのけて廊下を走りました。
前方の暗闇に女の子の姿が見えます。あたりに響き渡る甲高い笑い声。
もう恐ろしくて気が狂いそうでしたが、無我夢中で走りました。
どこをどう走り抜けたのか、気がつくと俺は外に出ていました。
しばらく走って、道路沿いの自販機コーナーでようやく一息つきました。
ズボンをまくり上げ、自販機の明かりで照らして見ると、
足首に異常はありませんでしたが、逃げ出す時にあちこちぶつかったのか、傷や痣がたくさん付いていました。

865 :841つづき ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:36
廃屋であったことについて、俺が覚えているのはここまでです。
あとは、家に帰るのが遅くなって、親にひどく叱られたことぐらい。
多少の脚色はありますが(セリフとか言い回しとかね)、95%くらいは本当にあった出来事です。
こうやって整理してみると、改めて気付いた事があります。
それは、記憶がかなりいい加減だなってことです。
何というか、アンバランスで『いびつ』なんですよね。
カギの掛かったドアや、女の子に見せてもらった数枚の写真。
そういうディテールは、細かいところまではっきり覚えているんですけど、家の中の様子なんかは曖昧な記憶しかない。
ただ、感触っていうか感情っていうか、怖いとか、気持ち悪いとか、そういう記憶が残っているだけなんです。
廊下の突き当たりの部屋に関しても、黒い部屋だっていう印象ばかりが強くて、
中がどうなっていたのかは、殆ど覚えていない。
部屋に写真があったのは見てるけど、どんな写真なのかはわからないんです。
ドアを開ける前のイヤな予感だったり、足を掴まれた時の感触だったり、
そういう自分の感じた事は、昨日の事のように蘇るんですけどね。
例外は、押入の中の光景と、耳元の低い声、振り向いた時の友達の表情。
特に友達の顔は、目に焼き付いて離れない位ハッキリと覚えていたんです。
ところが、あのあと友達がどうなったのかは覚えていない。
だから、気になって調べようと思ったんですよ。それが3日前の話です。

866 :841つづき ◆O2uqqje66g:03/04/18 15:37
名前もわからないんで、卒業アルバムで顔を探そうってパラパラめくりました。
そしたら居ないんです、記憶の中の顔と一致する奴が。
そんなはずはない。あの時、学校で待ち合わせして一緒に行ったんだから、
絶対同じ学校に居るはずだって、何回も見直したんだけど、居ない。
そこで、改めてその友達の顔を思い出そうとしたんですが、
黒い部屋の前で振り向いた時に見た顔以外、全然思い出せない。
虚ろなあの表情が、俺の中に残された記憶の全てでした。
それだけじゃないんです。
ずっと仲の良い友達だったと思ってたのに、
そいつと一緒に遊んだ思い出が、その廃屋へ行った時のものだけだって事に、その時初めて気付いたんです。
「そんなアホな・・・」
そう思って、もう一度アルバムを繰るうちに、あるページのところで手が止まりました。
そこには、あの廃屋にいた女の子の顔写真が載っていたんです。
慌てて他のページも確認しました。
その顔は、卒業アルバムのいたるところに載っていました。
名簿には、ちゃんと名前も住所も書いてあります。
正体不明だと思っていた女の子の存在を確認した事で、俺の記憶は、いよいよアヤフヤなものに成り下がりました。

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