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【師匠シリーズ】血 後編

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811 名前:血  後編2006/08/28(月) 22:06:56 ID:9j0TgqFm0
「はじめて見せてもらった時は、足が竦んだ。今でも寒気がする」
そんなことを聞かされると怖くなってくる。
「あいつの父親がそういう呪物のコレクターで、よりによってあんなものを娘に持たせたらしい。人格が歪んで当然だ」
煽るだけ煽って、京介さんは詳しいことは教えてくれなかった。
ただなんとか聞き出せた部分だけ書くと、「この世にあってはならない形」をしていること、そして「五色地図のタリスマン」という表現。
どんな目的のためのものなのか、そこからは窺い知れない。
「靴を引っ張られる感覚があったんだってな。感染呪術まがいのイタズラをされたみたいだけど、まあこれ以上変に探りまわらなければ大丈夫だろう」
京介さんはそう安請け合いしたが、俺は黒魔術という「遊びの手段」としか思っていなかったものが、現実になんらかの危害を及ぼそうとしていることに対して、信じられない思いと、そして得体の知れない恐怖を感じていた。
体が無性に震えてくる。
「一番いいのは信じないことだ。そんなことあるわけありません、気のせいですって思いながら生きてたら、それでいい」

812 名前:血  後編 ラスト2006/08/28(月) 22:08:00 ID:9j0TgqFm0
京介さんはビールの缶をベコッとへこますと、ゴミ箱に投げ込んだ。
そう簡単にはいかない。
なぜなら、間崎京子のタリスマンのことを話しはじめた時から、俺の感覚器はある異変に反応していたから。
京介さんが、第二理科室に乗り込んだ時の不快感が、今はわかる気がする。
体が震えて、涙が出てきた。
俺は借りたばかりのタリスマンを握り締めて、勇気を出して口にした。
「血の、匂いが、しません、か」
部屋中にうっすらと、懐かしいような禍々しいような異臭が漂っている気がするのだ。
京子さんは今日、一度も見せなかったような冷徹な表情で、「そんなことはない」と言った。
いや、やっぱり血の匂いだ。
気の迷いじゃない。
「でも・・・・・・」
言いかけた俺の頭を京介さんはグーで殴った。
「気にするな」
わけがわからなくなって錯乱しそうな俺を、無表情を崩さない京介さんがじっと見ている。
「生理中なんだ」
笑いもせず、淡々とそう言った顔をまじまじと見たが、その真贋は読み取れなかった。

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