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【長編洒落怖】一つの村が消えた話

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36: 伝者 2014/12/19(金) 11:24:29.44 ID:Q9WITJsub
Aは精神的に疲れている時とかに、「何かね」と会話を始めるからだ。

俺「引き返すか?」

B「だが、障芽池を確認しない事には道に迷うだけだぜ」

俺「それもそうか、行けそうかA?」

A「少しなら大丈夫、行こ?」

俺「分かった、何かあったら遠慮なく言いなよ」

B「少し歩く速度を速めるか?」

俺「どうするA?」

A「今のままで良いよ」

俺「分かった」

この時、俺は本能的に良くない感覚を捉えて始めていた。
これが第六感というのかどうかは分からないが。

37: 伝者 2014/12/19(金) 11:26:51.45 ID:Q9WITJsub
暫く歩いた時、

B「お?」

俺「どうした?」

A「・・・・・・」

Bが何か気付いたようだ。

B「この先に小屋があるぜ、あそこで少し休んでいかないか?」

俺「小屋?」

確かに獣道の先には小屋があった。

A「そこで休も?」

俺「ああ」

Aの身が万全で無い以上、そこで休む事にした。
俺は何故か、そこに小屋がある事に違和感を感じなかった。

38: 伝者 2014/12/19(金) 11:28:52.77 ID:Q9WITJsub
俺「随分と古い小屋だな」

小屋は草や木で覆われ、空を見上げても一面を覆われており、月明かりが差し込んでいなかった。

B「中に入ろうぜ、Aも俺達も休憩しよう」

俺「ああ」

Bは一人で小屋の出入り口に向かって行き、扉を開けた。
小屋の扉は鍵がかかっていなかった。

A「・・・・・・・・・・」

Aはずっと黙ってしまっている。

中に入ると、Bはそそくさと椅子を探しだし、そこにAを座らせた。
小屋の中は、椅子や机、包丁のような物等、色々な物が転がっており、何かの異臭も感じられた。

39: 伝者 2014/12/19(金) 11:32:34.98 ID:Q9WITJsub
Aは椅子に座り、Bは小屋の周囲を物色している。
俺は小屋の中を調べる事にした。
物が散乱している場所から、角を曲がり奥へ行った所に扉があった。

俺「なんだこの扉」

俺は扉を開けようとした。
その時、中から
「・・・・ポーン・・・・・・・・ポーン」
と言うような物音が聞こえてきた。


40: 伝者 2014/12/19(金) 11:35:09.54 ID:Q9WITJsub
俺は一瞬だけ手を止めたが、好奇心が勝り扉を開けてしまった。
扉の中は和式便所で、変な異臭はここから出ている事が分かった。
和式便所の窓は割れており、外の森が見える。
なんだと思い、便所を出ようとした時、

41: 伝者 2014/12/19(金) 11:36:11.00 ID:Q9WITJsub
「ああ・・・・ああああああ・・・ああああああ」
と言った声が後ろから聞こえた。

俺「!?」

その声は捻り出した様な声で、声だけでこちらを見ている気配がした。

俺「・・・・・・・・」

俺は立ち止まってしまった。
後ろを振り向こうにも、恐怖心が勝り、硬直してしまった。

「あああ・・・・あああああああああ・・・・」

声が聞こえてくる、ゆっくり近づいてくる感じがした。
その時、

42: 伝者 2014/12/19(金) 11:37:58.67 ID:Q9WITJsub
「おい!、何やってる!」

と、Bが小屋に戻ってきた。
同時に後ろの声は消えた。
その瞬間に俺はBに引かれ、Bは思いっ切り扉を閉めた。

俺「・・・・・・・・・・・・」

B「おい!、大丈夫か!」

俺「ああ、Bか」

B「ったく、Aもお前も大丈夫かよ!、Aは奥の椅子で寝ちまってるし、お前は扉の前で失禁しながら立ち尽くしちまってるし!」

俺は失禁していた。
恐怖の余り、自分でも気付いていなかったのだ。
俺は今体験したことをBに話した。

B「それが何かは分からないが、とにかくこの小屋から出る方がよさそうだな」

俺「だな」B「Aも連れて出るか」

俺達は物が散乱している部屋に戻った。

43: 伝者 2014/12/19(金) 11:39:13.52 ID:Q9WITJsub
俺「おい、Aは?」

B「あ?、あれ、そこの椅子にいた筈なのに」

いつの間にかAが椅子からいなくなっていた。
と、部屋の角の所から足音がした。

俺「おいA!」

部屋の角の所に行くと、壁と同化した扉があった。

B「なんだその扉」

扉を開けると、階段があった。
二階へと続く階段だ。
俺は正直、この小屋に二階があった事に気付いていなかった。
外から見ても二階と思われる所は全て、木や草で覆われていたからだ。

44: 伝者 2014/12/19(金) 11:40:13.36 ID:Q9WITJsub
俺「二階にAは行ったのか?」

B「そうだろ、小屋の入り口の扉も閉まってるし」

俺とBは二階の階段をゆっくりと歩いた。
速く歩けば抜け落ちそうな程、階段の木は腐っており、朽ちている。
そして二階の部屋の扉を開けようとした時、

B「おい俺!、待て」

俺「何だ?」

B「扉を良く見ろ」


45: 伝者 2014/12/19(金) 11:41:07.89 ID:Q9WITJsub
扉は数百枚と言える数のお札で閉じられており、
扉の両端には盛り塩があった。
だが、その盛り塩は黒く、変色していた。

B「扉の雰囲気からして、ここはやばいと思う。
だが、その扉と壁の所のお札が破られているから、Aはこの中にいる」

俺「行くしかないだろ」

B「俺が開ける」

Bはそう言うと、思いっ切り扉を蹴飛ばした。
その瞬間、Bは何かの強い力で吹き飛ばされ、階段の一番下へ落ちた。

46: 伝者 2014/12/19(金) 11:42:18.56 ID:Q9WITJsub
俺「おいB!」

B「俺!!!、部屋の中を見ろ!!!!」

俺は部屋の中を見た。
中にはAが立っていたが、様子がおかしい。
こちらの方を見て、Aは両手を真横に上げている。

俺「A!!!!」

と言い、駆け寄ろうとした瞬間、

人の形をした黒い影の様な「何か」がAの後ろから現れ、赤く濁った眼で俺を睨み、追いかけてきたのだ。

47: 伝者 2014/12/19(金) 11:43:37.92 ID:Q9WITJsub
俺「!?」

俺は咄嗟に扉を閉め、黒く濁った塩を掴み、
階段を駆け下りた。
下に落ちたBは、落ちていた包丁を手にし、身構えていた。

俺「B!!逃げろ」

B「Aがいるんだぞ!!」

俺「!!」

その時、和式便所のある方向からも黒い何かが近づいてきた。

B「クソッ!!!」

Bは包丁を持ったまま、俺と小屋を出た。

48: 伝者 2014/12/19(金) 11:45:30.67 ID:Q9WITJsub
Bは包丁を持ったまま、俺と小屋を出た。
小屋を出た瞬間、

A「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」

Aの悲鳴が小屋から響いた。

俺「A!?」

B「クソオオオオオオオオオオ」

Bが小屋に戻ろうとするが、黒い何かが追ってくる。

「あああああ・・・・あああああああああああああ」

呻き声を上げながら迫ってくる黒い何かに、
Bは持っていた包丁を投げ、俺は掴んでいた塩の塊を投げた。

「あああああああああああああああああああ」

黒い何かの動きが止まった隙に、俺とBは逃げた。
獣道を無我夢中で走って、途中で何度も転んだ。
正直、この辺りの記憶は曖昧で、良く覚えていない。

49: 伝者 2014/12/19(金) 11:47:13.59 ID:Q9WITJsub
数分程全力で走り続け、俺が転んだ時、

「ああああああああああ」

耳元で声がした。
それから俺達は無我夢中で走り続け、障芽池の森の周囲に張られた有刺鉄線の前に出た。
俺とBは無我夢中で外の大人達に助けを求め、自作の笛を吹いた。
それに気づいた神主一族の大人達に助けられた。

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