525 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:47:53 ID:2bMdqCH20
母は全然信じていないようで、心配そうに私を見つめていましたが、それを無視して父にしがみついて眠りました。
その晩以降、また何もなく日々が過ぎ、初めは一寸怖かったのですが、何も起こらないままだったので、
私も忘れ始めていました。
そして、また村で人が亡くなったのです。
今度は近所のおじさんで、もっと小さい頃はよく遊んでくれていたのですが、
病気で入院して、そのまま回復せずに亡くなったとの事でした。
そして、お葬式からしばらく立ったある日の晩、とうとうそれは起こりました。
今度も何か物音を聞いたような気がして、夜中に目が覚めました。
しかし、その日は友人と昼間に裏山で遊び回っていたので、起きるのが遅れて仕舞ったようで、
窓を見ると、前よりも影はハッキリと人の形をして、カーテンに写っていました。
私はまた逃げだそうとしましたが、その影がもう窓の直ぐ外にいるらしく、
鈴を鳴らしながら歩いている人の影は、今にも部屋に入ってきそうで、怖くて動けなくなりました。
526 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:48:36 ID:2bMdqCH20
鈴の音もハッキリ聞こえます。
そしてとうとう『ソレ』は、部屋に入ってきました。
そしてその影が部屋に入った瞬間、カーテンを照らし出していた光も部屋の中に入り、
部屋の中に丸い光のトンネルを、私も包んだ形で造ったのです。
そしてその中を、亡くなったはずのおじさんが、鈴を鳴らしながら入って来たのです。
そして、私と目が合ってしまいました。
おじさんは「よう、ゆうぼう。久しぶりだな・・・」と言ってきましたが、
その目はうつろで生気など無く、肌の色も不気味な程白いせいで光の中では青白く、異常に恐ろしく見えました。
私はビビリ上がってしまい何も言えないまま、おじさんを見つめていました。
「何だ、そんな怖い顔をして。何時もおじさんには元気に挨拶していたじゃないか?何かあったのか?」
と聞いてきました。
怖いのは死ぬ程怖いのですが、害を与えられそうもないので、
なんとか声を絞り出し、「こんばんわ」となんとか答えました。
今思い出しても間抜けな受け答えでしたが、それが精一杯でした。
527 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:49:08 ID:2bMdqCH20
「ゆうぼう、おばさんを知らないか?
おばさんを捜したんだけど、見つからないんだ・・・」
おばさんとは、おじさんの奥さんで(あたりまえか?)、
後から聞いた話だと、その晩は親戚の家に行っていたそうです。
私は当然そんな事を知るはずもありませんから、首を振りました。
「そうか・・・知らないか・・・」
おじさんは視点の定まらない目でそう答え、しばらく考え込んでいましたが、
何か良い事を思い付いたように、とてもとても嬉しそうな笑顔になりました。
その笑顔は本当に嬉しそうですが、私には途轍もなく恐ろしい笑顔に見えました。
前進の感覚が麻痺するような恐怖です。
そしておじさんは言いました。
「ゆうぼう、ゆうぼうと一緒に行こう。そうだ、それが良い」
クスクスと笑いながら、私に近づいてきました。
528 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:49:42 ID:2bMdqCH20
私は涙と鼻水でグチャグチャになっていましたが、どうする事もできず、
木津おじさんに腕を捕まれるまで動けませんでした。
しかし、おじさんが腕を掴んだ瞬間、
全身の細胞が悲鳴を上げるような、電気が駆けめぐるような激しいショックが走り、
とっさに腕を振り解き、勉強机に方に這って逃げました。
おじさんは少し意外そうな顔をしながら、
「どうした ゆうぼう?良い所に連れて行ってやると言ってるのに?」
おじさんはそう言いながら、笑顔のまま私に近づいてきます。
私はこの状況から逃げ出す為、頭をフル回転させていましたが、
パニックも起こしていたので、考えがなかなか纏まりませんでした。
529 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:50:14 ID:2bMdqCH20
廊下に逃げるには、おじさんの横を通り抜けるしかありませんが、とてもそんな事など出来ません。
おじさんはどんどん近づいてきます。
もうダメかと思った時、ようやく母親の話を思い出しました。
あのお守りは、あの日以降机の引き出しに入れたままのはず!
その事を思い出し、とっさにお守りを取り出しましたが、おじさんに肩を掴まれてしまいました。
また、全身にショックが走り気が遠くなり始めた時、廊下の襖が開きました。
そこに立っていたのは母でした。
母は私に渡したのと同じお守りを持っていて、おじさんに向かって怒鳴りました。
530 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:50:59 ID:2bMdqCH20
「その子を連れて行く事は、私が許しません!!」
そしてお経を唱えながら、私とおじさんに近づいてきました。
おじさんはお守りを怖がるかのように後ずさり、私から離れていきました。
「あなたが行く所は、あちらです!一人でお行きなさい!!」
そう怒鳴ると、再びお経を唱え始めました。
「そんなに怒らなくても・・・」
おじさんは悲しそうにそう言い残すと、トンネルが続く廊下の方に歩き出しました。
そして壁に消えかけた時、廊下で悲鳴が上がりました。兄と姉の声です。
母は一瞬お経を唱えるのを止めましたが、その瞬間おじさんの動きも止まったので、再びお経を唱え続けました。
おじさんが完全に壁の中に消え、光のトンネルが消えると、初めてお経を唱えるのを止め、
力尽きたようにその場に座り込みました。
冬の夜中なのに汗でびっしょりで、体中から湯気が立っていました。
531 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:51:30 ID:2bMdqCH20
しかし、兄と姉が「今の何だったの?」「人が壁に!!」と言いながら私の部屋に入ってくると、
母は急に立ち上がり、私達を抱えて泣き始めてしまいました。私も大泣きです。
兄と姉は、困ったような顔をしていたんだと思います。
その騒ぎで、ようやく父が起き出してきました。
「あなた、やはりこの部屋は良くありません!ユウスケも連れて行かれそうになりました!」
そう母が訴えかけると、父は困った顔をして黙り込んでしまいました。
「あなた、まだ私の言う事を信じられませんか?私が病気だと思っているのですか?」
母は必死になって訴えかけましたが、やはり父は困った顔をしたままです。
「コレでもまだ信じられませんか?」
そう言うと母は、私のパジャマの上着を脱がし、父に腕と肩を見せました。
532 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:52:04 ID:2bMdqCH20
その時になって初めて私も気が付いたのですが、
おじさんに捕まれた腕と肩の所が、手の形に青アザになっていたのです。
「まさか・・・」
そう言うと父は、その場に座り込んでしまいました。
兄や、姉も覗き込んで怖がっていました。
「じゃあ、お前の言っていた事は本当だったのか・・・」
そう言ったきり、惚けたようになってしまいました。
母はそんな父に近寄り、
「何度も言ったでしょ?ここは霊道なんです。何とかしないと、この部屋は危険なんです」
霊道と言われても、私も兄弟も何がなんだか分りませんでしたが、父は何度も頷いていました。
533 :本当にあった怖い名無し:2005/10/02(日) 03:52:35 ID:2bMdqCH20
次の日から、父の動きは素早い物でした。
村の最年長のお年寄りの所に相談しに行き、僧侶を紹介して貰って、
車で迎えに行き、早速見て貰いました。
そして、お坊さんの指示で庭にお堂を建てたのですが、それが変わっていて、
普通仏像が入る場所に何もなく、両側の壁に、お札を仕舞うスリットのような物が付いていて、
正面の扉と反対側にも、正面と同じような扉が付いていました。
まるで、前からも後ろからも出入りが出来る、エレベーターのようなお堂です。
そして、お堂から何か変わった模様を彫り込んだ石を、道しるべのように家を迂回するルートの地面に埋め込み、
家の裏側にも同じようなお堂を建てました。
「これで霊魂は家を迂回して通るようになる。もう安心じゃよ」と言いました。
確かにそれ以降、何も起こりませんでした。