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【長編洒落怖】アケミちゃん

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793 :1:2012/04/08(日) 21:40:13.72 ID:D8CCaY6k0
先日のID:izNH2elO0です
予定より早く帰って来れたので先日の続きを書きます。
ただし、かなりのボリュームになってしまたので、全てを一気に投下すると
恐らくこの板の連投規制に引っかかり日付が変わるまで書き込めなくなること
が予想されます、そのため一端きりの良い部分まで投下し、残りは1時間後
くらいに投下します。
2ちゃんねるのシステム上どうにもならないため、その旨ご了承ください。
5月の事件から1ヶ月以上過ぎた6月末、その頃になると警察も「何かあったら電話してね」
と言って巡回してこなくなっていた。
俺自身、もう流石に無いだろうと勝手に思い込みかなり油断していた。
それがいけなかったのかもしれない。
その日俺は夜中に小腹が空いたので、ちょっと何か買って来ようと駅前のコンビニまで
行く事にした。時間は確か夜の10時半か11時頃だったと記憶している。
コンビニで買い物をして外に出ると、まだ終電の時間すら過ぎていないのに駅前にやけに
人が少ない。
前回と同じ状況なのに、その時の俺はこんな事もあるんだなと特に気にせず歩き始めた。
暫らく暗い夜道を歩いていると、いつも通る公園に差し掛かった。
すると、街灯の明かりに僅かに照らされてベンチに誰か座っているのが見えた。ただ
距離が少し離れていたのと、街灯があるとはいえそんなに明るくないので誰が座って
いるのかまでは解らなかったが。
「こんな時間になにやってんだろ?」と思いながら公園を通り過ぎようとすると、
その人影がこちらに気付いて駆け寄ってきた。
シルエットからどうやら女のようだと気付いた瞬間、俺は自分がいかにうかつな人間
であるかを後悔した、予想通り駆け寄ってきたのはアケミちゃんだった…

794 ::2012/04/08(日) 21:40:51.97 ID:D8CCaY6k0
アケミちゃんはニコニコしながら「やっと会えたね」と嬉しそうだ。
手元には例の少し大きめのバッグも持っている、どう見てもその中には例の中華包丁が
入っているのだろうことは容易に想像が付く。
俺は何故かその時、かなり混乱していたようでこんな状況にも関わらず「相手が
アケミちゃんじゃなければ、こんな最高なシチュエーションはないのに」と、この期に及んで
わけの解らない事を考えていたのを覚えている。
そんな事を考えながらも、なんとかして逃げないといけないとも考えをめぐらした。
アケミちゃんとの距離はまだ4~5m離れている、彼女はなんと呼べば良いのか
知らないが、履いているのはヒールのついたサンダルみたいな靴のようで、明らかに走り難
そうに見える。
ちなみに俺はスニーカー、そのうえ高校時代はバスケ部だったのでそこそこ体力にも
自信がある、このまま走って逃げれば振り切れそうだ。
自宅の方向へ逃げるのは不味いと感じた俺は、タイミングを見計らい道を90度曲がり
自宅とは別方向へ全力疾走した。
走りながら俺は警官に言われた事を思い出した「携帯の番号登録しておくから、話が
できなくてもかけてさえくれればアパートにパトカーを向かわせるよ」と。
慌てていつも携帯を入れているほうのポケットに手を突っ込んだのだが、携帯が無い、
反対側とケツのポケットにも手を当てて確認したのだが無い。
そういえば、どうせ直ぐに戻ってくるしと思ったので、携帯は充電器に差しっ放しで
出てきたんだった…
俺は自分の迂闊さを心底後悔した。


795 ::2012/04/08(日) 21:41:39.88 ID:D8CCaY6k0
たぶん1km近くは走ったとおもう。
今考えるとかなり不自然なのだが、その間車は何台かすれ違ったが、歩いている人には一切
出会わなかった、夜中の11時頃とはいえなんかおかしい、偶然か?
もう流石に追ってきていないだろうと考えた俺は、一端立ち止まりこれからどうするべきか考えた。
そこである事に気付き、今来た道とは別ルートでさっきの公園まで戻る事にした。
気づいた事とは、その公園には今時珍しく電話ボックスがあったのを思い出したからだ、
途中でアケミちゃんに出会うリスクはあるが、今時「確実に電話ボックスがある場所」というのは
かなり貴重だ、とにかく警察に連絡を取らないといけない。
俺は神経質なくらい慎重に、曲がり角では特に細心の注意を払いながら、かなり時間をかけて
公園まで戻った。
公園につき周囲をうかがい更に公園の周りを一周して確認したが人影は一切無く安全そうだ。
安全を確認できた俺は電話ボックスへと向かうと扉を開けた。
その時、俺の肩を誰かが叩いた。
「マジですか…」このとき俺は一生のうちで最大の絶望感を感じていた、そして「きっと彼女とは
別の人だ」という僅かな期待をもって振り向いた。
そこには、当然のようににっこりと可愛らしい笑顔で俺を見つめるアケミちゃんがいた。
「うへぇあああああああああああああああ!」

796 ::2012/04/08(日) 21:43:39.08 ID:D8CCaY6k0
俺はかなり情けない叫び声を上げて地面にしりもちをついた。
アケミちゃんはそれがおかしかったのか、俺を見下ろしながらクスクスと笑っている、その笑顔
がやっぱりかなり可愛くて、可愛いからこそよけいに不気味だった。
こんな情けない状況でも、それでも俺は虚勢を張って「この前と言い今回と言い、なんで
場所がわかるんだよ!」とかなり強気に質問を投げつけた。するとアケミちゃんは、またクスクス
と笑いながら「だって、○○君のジーンズのポケットの中に“私”がいるから、どこにいてもわかるよー」と
言い出した。
訳が解らない、こいつやっぱおかしい、いわゆる「本物」ってやつに出会ったことは無いが、これが
本物というやつなんだろう、俺があっけに取られていると、アケミちゃんは「お尻のほうの右の
ポケットだよー」と言い出した。
どうやらポケットの中を確認しろということらしい。
逆らったら何をされるか解らない、おれは地面に座ったまま腰を少し浮かせポケットの中を
確認してみた。すると中に何か長細い物がある、乾電池?と思いながらそれを取り出すと、
街灯の薄明かりに照らされたそれは人の指のようなものだった。
「ううぇ!」

797 :5:2012/04/08(日) 21:44:40.34 ID:D8CCaY6k0
俺はまた情けない叫び声を上げてそれを地面に投げ捨てた。
が、投げ捨てて気付いたのだが、触った感触といい質感と言いどう見ても本物の
指では無さそうだ、どうやらマネキンか何かの指らしい。
するとアケミちゃんがにっこりと微笑みながら「捨てちゃダメだよー」と言いながら
指を拾い上げ目の前に屈みこむと、俺のポケットに指を戻し、そして耳元でこんな事を
囁いた
「次“私”を捨てたら殺すから」
俺は何か言い返したかったが、あまりの事に頭が真っ白になってしまい、ただ顔を引きつら
せることしかできなかった。
「ヤバイ、ヤバ過ぎる、こいつとんでもない、早くなんとかしないと殺される…」しかし頭の
中は完全にパニック状態、とてもじゃないがこの状況で冷静な思考などできない。
するとアケミちゃんは「こんなところで話しているのもなんだし、○○君のおうちいこ」
というと、俺の腕を掴み片手で引っ張り起した。
一応書いておくと、俺は身長175cm、体重は72kg、説明するまでも無いが、女の子が
片腕で引っ張り起せるような体格ではない。
とても10代の女の子とは思えない物凄い力だ。


798 ::2012/04/08(日) 21:45:40.27 ID:D8CCaY6k0
あまりの事に唖然としている俺の腕を引っ張り、アケミちゃんはどんどん俺のアパートの
方向へと進んで行く、どうやら俺の住んでいる場所も既に突き止めているようだ。
その時気付いたのだが、また電車の時のようにカチ、カチ…カチ、カチ…とプラスチックの
ような硬い軽い物がぶつかり合うような変な音がしている、アケミちゃんはニコニコと
嬉しそうだ、そしてようやく気付いたのだが、どうやらこのカチ、カチという音はアケミちゃんが
歩くたびに鳴っているらしい。
その時はどこから鳴っているのかはさっぱり解らなかったが。
歩きながらアケミちゃんはかなり嬉しそうだ、そして俺の腕をしっかりと掴んでいて
離しそうにはない、俺は自宅につくまでになんとかこの場を切り抜ける方法を考えな
ければとあれこれ思考をめぐらした。が、そうそうそんな良い方法が思いつけるわけも無く、
かと言って文字通りありえないレベルの「怪力女」であるアケミちゃんを力ずくで
振り切るなど不可能だ、そしてなんら解決策が出てこないままとうとう自宅アパートに
到着してしまった。

812 ::2012/04/08(日) 22:47:32.01 ID:D8CCaY6k0
部屋に着くとアケミちゃんは楽しそうに俺の部屋を物色し始めた。
「男の人の部屋てやっぱ結構散らかってるんだねー」とか言いながら色々見て周っている。
が、俺のほうは気が気ではない、今は機嫌が良いが、このあからさまなメンヘラちゃんが
いつ機嫌を損ねるか解らない、そして機嫌を損ねたら恐らく俺は殺される。
すると彼女は「部屋散らかっているし片付けてあげるね」と言い出した。
この状況だけ見れば物凄く「おいしい」シチュエーションだ、まるで付き合ったばかりの
彼女を始めて自分の部屋に呼んだような、そんな状況と言っても過言ではない。
しかし、部屋にいるのは巨大な中華包丁をバッグの中に隠し持ったコテコテのメンヘラ
さんであり、俺はメンヘラさんに捕らえられた哀れな獲物でしかない。
そんな事を考えていると、アケミちゃんは例のカチ、カチ…カチ、カチ…という音をさせながら
部屋の隅に無造作に積み上げられた雑誌やマンガやテキストやその他諸々を種類ごとに
わけて整理し始めた。
その時、恐らく彼女は髪の毛が邪魔に思ったのだろう、少し無造作に自分の首もとの髪を
かき上げた。
その時俺は信じられない物を見た。
アケミちゃんが髪をかき上げて見えた首筋に薄っすらと線が入っており、それは後ろの方まで
続いているのだが、丁度うなじの真上部分で「縁が欠けている」ような状態になっていてそこだけ
「ちゃんとかみ合っていない」としか見えない状態になっている。
そしてそのかみ合ってない部分が、アケミちゃんが動くたびにカチ、カチと鳴っているのだった。

813 ::2012/04/08(日) 22:48:11.60 ID:D8CCaY6k0
一瞬の事だったが見間違いではない、明らかにアケミちゃんの首筋には「つなぎ目」がある。
俺は頭の中が???????でいっぱいになった。「なんだこれは?俺の目の前にいるのは
一体なんだ?」ここにきてアケミちゃんは危険なメンヘラさんであるという認識を改め、なんだか
良く解らない人間ではない何かの可能性が出てきた。
そんな事を考えながら俺がアケミちゃんの首元を凝視していると、それに気付いたのか「なんですかぁ?
恥ずかしいじゃないですか」とにこやかに笑いながら、また部屋の整理をしている。
その時、恐らく後で整理しようとしていたのだろう、棚の少し上のほうに置いてあったテキストや辞書
などがアケミちゃんの頭に落っこちた。
ドザッ!と大きな音がして、その後「いったー」と頭をさすりながらどじっちゃいました的な顔を
して俺のほうを見た。
が、その姿は異様だった。
首筋に入った線のところから明らかに首が「ずれて」いる。
アケミちゃんは「あー…」と言いながら首を元に戻すと、何事も無かったようにまた本や雑誌の
整理をしはじめたのだが、俺の頭の中はパニック状態だ。「一体あれはなんなのか」「俺は一体
何を見た???」意味不明すぎる、一つ解った事は俺の目の前にいる「それ」は明らかに人間では
ないということだ。

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