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【洒落怖】かんのけ坂

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316 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 10:41:15.16 ID:sXth/BcE0
俺らは震えながら昨日のことを話した。
中年男性は黙ったまま最後まで聞いてくれた。
俺らの話が終わると一言、
田んぼの場所と、はじめに彼の原付の調子が悪くなった場所はどこか、ということだけ聞いてきた。
昨晩彼と一緒だったうちの1人が地図で場所を教えると、男性は「そこかぁ」と呟いた。
そのあと簡単な調書のようなものを取られ、それぞれ家に返された。
原付も警察が回収してくれたようだった。
後日、代表して俺が父親と彼の両親に話をしに行った。
向こうの両親も警察から事情を聞いていたらしく、ただただ静かに泣いているだけだった。
結局、司法解剖は彼の両親が拒否したので、彼の死因は心筋梗塞だということになった。

317 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 10:48:52.47 ID:sXth/BcE0
後日、彼の葬式があり、父親と友人と参列した。
焼香するために彼の遺影の前までくると、棺桶がなかった。
そのまま焼香を終えたが、
あの時帰らさなければという後悔がすごくあり、なんとしても彼に謝りたかったので、
思い切って彼の両親にきいてみた。
すると、彼の棺桶は祭壇の裏にあるのだという。
会わせてほしいとお願いをするも断られた。
無礼だとは思ったがお願いし続けると、渋々了承してくれた。

318 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 10:57:12.02 ID:sXth/BcE0
葬式が終わるまで無理だと言われたため、終わるまで全員で待っていた。
やがて式が終わり彼の両親に呼ばれ行ってみると、そこには棺桶ではなく箱があった。
高さ2mほどで横も2mほど、幅は棺桶と変わらない幅だった。両開きの扉が側面についていた。
装飾も一切なく、ただの木の箱にみえた。
俺らが立ち尽くしていると、彼の両親が、
「正直私達でも見るのが辛い、見る覚悟がある方だけ息子を見てやって下さい」と言った。
正直足が震えていたが、嫌な予感がしつつも俺は両開きの扉を開けた。
予想通り彼はあの写真のままの姿でそこにいた。

319 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 11:03:49.84 ID:sXth/BcE0
手を突き出し、恐らくまぶたを閉じることができなかったのか目の部分には白い布が被せてあった。
思わず、ひっと声がでて引きつけを起こしそうになった。
俺の父親を含め全員が見たが、皆同じような反応をしており、中には腰が砕けて立てなくなる者もいた。
全員が見終わって彼に謝ったあと、彼の両親が事情を説明してくれた。
腕をさげるには、もう肩も外れているため両腕を肩から切断するしかなかった。
瞼もまるで皮膚がそこだけなくなったかのようになっており、閉じることができなかったという。
俺らはただただ泣きながらそれを聞き、彼の両親に謝った。

321 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 11:22:26.28 ID:sXth/BcE0
彼の両親は「あなた達のせいじゃない」とずっと言ってくれたが、俺らはただただ謝るしかできなかった。
そのあと泣きながら父親に連れられて家に帰った。
父親が帰りながら車中で、ふと警察で中年男性がしたのと同じ質問をしてきた。
地図で説明していたのを聞いたので大体の場所を言うと、父親も「そこかぁ」と呟いた。
その場では聞く気になれず、その日はそこで会話は終わった。


323 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 12:17:51.15 ID:sXth/BcE0
彼の四十九日が終わり、父親に葬式の日のことを聞いてみた。
父親は「話半分で聞いてくれ」との前置きをして教えてくれた。
俺の祖父が父親に話したことだそうだ。
恐らく彼の原付が初めに故障したのは、『かんのけ坂』と呼ばれている所だろう。
今では『かんのけ』と訛っているが、昔は棺桶坂と呼ばれていた。少なくとも祖父が子供の頃はそうだった。
当時、棺桶をつくる仕事は(あくまでその近辺では)身分の低い人がする仕事だったそうだ。
そのため棺桶一つの値段も安く、ひもじい生活をしていたそうだ。
また、差別もあり、かなり虐げられていたらしい。

324 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 12:21:04.79 ID:sXth/BcE0
そんな仕事で唯一儲かるのが特注品だった。
例えば既成のものに入らないほど巨漢であるとか、なんらかの事情で既成の棺桶に入れられないケースに、
特注品を作るんだそうだ。
特注品の話を聞き、合点がいった。
棺桶に入らないほどの巨漢などそうそういるものではない。
父親は続けた。
手を拱いていたのが女性だという点でも思いあたる節があるという。
祖父が子供の頃、棺桶を作るのがとても上手な器用な女性がいたらしい。
その評判は周囲に広まり、気付くと特注品の注文はすべてその女性の所にいったそうだ。

325 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 12:24:16.45 ID:sXth/BcE0
既成品はある程度作り置きしているが、特注品は死後注文が入って死体が腐る前にすぐに用意しなくてはならない。
その女性は特注品であれど注文が入れば必ず次の日には棺桶を作り上げた。
見た目もただの箱ではなく、装飾もちゃんとついており、とても一晩で作り上げたとは思えない出来だったそうだ。
丁度その頃不審死が相次ぎ、彼女はそれらの注文を全てこなしたという。
しかし最終的に、特注品の注文が彼女の所にしかこなくなり、どんどん私腹を肥やして行く彼女は、
他の棺桶屋や周囲の農民からも妬まれ、最後は若くして惨殺されたそうだ。
大勢に農具や工具で原型をとどめないほど無残に殺され、田畑の肥やしにされたらしい。

327 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 12:29:18.22 ID:sXth/BcE0
父親は、ここからは自分の予想だという。
恐らく彼が田んぼの中で硬直していたのもそのせいではないか、
手を拱いていた女性はその女性ではないだろうかと。
考えすぎだと思うし、ここからは祖父の作り話かもしれない。
ここまでの話は知っている人もいるだろうが、ここからの話は祖父からしか聞いたことがない。と父親は続けた。
例の女性が殺されたあと、殺した棺桶屋たちが彼女の家に押し入ったそうだ。
どうして特注品があんな短期間で作れるのか。特殊な道具、方法でもあるんじゃないかと探したらしい。

328 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 12:31:36.65 ID:sXth/BcE0
すると家には、作りかけの特注品の棺桶と、見たこともない祭壇があったそうだ。
特注品と言えど亡くなり方は様々なため、一つ一つの大きさ、形が違う。
にも関わらず、彼女が特注品を先に作っているのを全員が不審に思ったそうだ。
そんな最中、不審死が起こった。
棺桶屋たちはもしやと思い、彼女の作りかけの棺桶を見にいくと、寸分違わずぴったりだったらしい。
もしかすると、彼女が特注品の注文を貰えるようなんらかの方法、呪いで不審死を引き起こしていたのかもしれない。
また、それが今回俺の亡くなった友人にたまたま降りかかったのではないだろうかと、言って口を閉ざした。

329 :本当にあった怖い名無し:2013/09/11(水) 12:36:50.09 ID:sXth/BcE0
亡くなった彼の両親は地元の人じゃないので、この話はしらないだろう。
友人にも話していない。
ただ、もう自分で溜め込んでおくのが辛くて、ここに書き込みをさせてもらいました。
長文乱文駄文を長々とすいません。
あのとき引き止めておけばと今でも思うのですが、正直怖かった。
体も冷たく、瞬きもせずに帰りたいと言う彼から離れたかった。
本当に申し訳ない。
読んでくれた方ありがとう。

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