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【師匠シリーズ】デス・デイ・パーティ

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436 :デス・デイ・パーティ ◆oJUBn2VTGE :2010/09/12(日) 00:35:57 ID:JDXpPZZg0
「私たちはこれから、『最後の三つめをなかなか答えない』という行動に出る。するとなにが起こるか。分かるな。下剤が効いてくるはずの時間を超過するんだ。何ごともなくその時間が過ぎたら、下剤は入れられていなかったということ。
もし仮に腹が痛み出したら、下剤は入っていたということになるが、私たちはなにもミスをしていない。間違えてもいない、制限時間もない、無理に喋らせようとしていない。そして、腹が痛み出したら未来永劫、絶対に三つめを誰一人答えないことを宣言する。
にも関わらず下剤を入れていたとしたら、これはアンフェアだ。入れられる理由なんてないのだから、論理によって成り立つゲームの根底を崩してしまう。ここまでは私の理屈だ。だが、おまえは今、『それは確かにアンフェアだ』と思ってしまった」
京介さんの力強い言葉につられ、俺も、他のみんなも頷いてしまった。coloさんは表情を引っ込めて反応もしなかった。
「口を塞がれ、これからルールを追加することも出来ないおまえは、結局下剤を入れられない。こちらの勝ちだ」
見事な勝ち名乗りだった。俺たちは感心して思わず手を叩いた。すごい。これこそが発想の転換だ。coloさんの頭ががっくりと落ちた。観念したらしい。これからなにが起こるか理解できたようだ。
下剤が入っていなかったと俺たちが確信できるまで、拘束されるのだ。筆記等によるルール追加もできないように、部屋にあった布類で縛り上げる。その作業は女性陣が行ったのであるが、なんだかいけないものを見ているような気がしてドキドキする。
椅子に座ったまま身体の自由を奪われたcoloさんの目に涙が浮かんだのが見えた。やばい。可哀想になってきた。自業自得なのに。
「で、下剤ってどのくらいで効くの」
みかっちさんの言葉に部屋の中がシーンとする。
たぶん、四、五時間というファジーなところで意見が落ち着き、念のために六、七時間くらい余裕をみることにし、なんだかんだで結局朝まで宴が開かれることになった。
パーティの主役であるcoloさんの目の前で、俺たちは語り合い笑い合いふざけあい、語り合った。
coloさんにメソメソと泣かれたらどうしようと思ったが、変な格好のままあっさりと本人は寝てしまい、俺たちは心おきなく時間をつぶすことができた。

438 :デス・デイ・パーティ  ラスト ◆oJUBn2VTGE:2010/09/12(日) 00:39:52 ID:JDXpPZZg0
後から考えると、とっとと解散するとか、「もうやめよう」と言ってcoloさんと休戦条約を締結するとか、下剤の箱やレシートがあるかどうか探すとか色々やり方があったような気もするし、どうしてcoloさんはこの展開を予知できなかったのかとか、
京介さんの未来予知に関する考え方にも多少の疑問点もあったが、その時の俺たちはそういう細かいことを抜きにして楽しい時間を過ごすことに全力を尽くし、変な角度からの青春をとにかく謳歌していたのだった。
この混沌としたデス・デイ・パーティの顛末に付け加えることが一つ。
夜中の十二時を回ろうかというころ、電話が鳴った。携帯ではなく、coloさんの自宅の電話だ。
眠っているcoloさんをちらりと見てから、京介さんが受話器を取る。
「はい」
相手と二こと三こと会話を交わしてから受話器を置く。そしてcoloさんのところへ行って、肩を叩いた。ゆっくりと彼女は目を開く。
「あの変態から電話。『おめでとう』。以上」
そして京介さんはまたみんなの輪に戻っていく。
俺はそのやりとりを見ていて、なんだか不思議な気持ちになった。はっぴですでいつーゆうと言われても、まったく嬉しそうな様子を見せなかったcoloさんが、初めてニコッと笑ったのだ。
また目を瞑り、眠りにつこうとする彼女を見ながら、俺はふと今日はcoloさんの本当の誕生日だったのかも知れない、と思った。
「ちょっと、あたし、合ってたじゃない!」
腹を痛めることもなく無事に迎えた次の朝、coloさんの拘束を解いて解散となったとき、みかっちさんが叫んだ。出題者であるcoloさんから三つめの答えの説明があったのだ。
X=1-(1-1+1-1+1-1+1-1+1-1+1-1+ ……)
このとき、右項の括弧内は最初の式である、
X=1-1+1-1+1-1+1-1+1-1+1-1+ …… の右項と等しくなるため、
X=1-X
2X=1
X=1/2
となるのだそうだ。ほんとかよ。
「にぶんのいちって、言おうとしたのに。あたし算数得意なんだから」
算数というあたりが信用できなかったが、そういうことにしてあげた。

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