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【洒落怖】橋の花束

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166 :本当にあった怖い名無し:2007/02/19(月) 02:07:33 ID:HMM22o2a0
何者かが追ってくる気配は無い。叫び声もしない。 
立ち止まって友人に携帯を掛ける。 
「逃げた!?お前無事逃げられた?」 
息を荒げながら友人が応える。 
『平気だけどさ!な、なによアレ!?どうしよ!俺どうしよ!??』 
友人は、現場に自転車を放置してきてしまったこと、自宅が逃げた方向とは反対なので、
また橋を渡らねば帰れない事実にテンパりまくっていた。 
携帯の時計は8時を回っている。橋の向こうは暗くて見えず、友人の様子も分からない。
更にこんな時に限って、車が一台もやって来ない・・・ 
「わかった、じゃ助け呼ぼう!
 お前の自転車壊れたとでも嘘ついて、親でも友人でも呼び出して車持ってきてもらうんだ!
 俺もやってみるから!」 
『いやだ!こっち迎えにきてくれ!』と喚く友人をなだめ、携帯を一度切り、母親にダイヤルした。 
―ツーッ、ツーッ、ツーッ・・・
繋がらない・・・てか呼び出し音さえ鳴らないということは・・・画面を確認。『圏外』の表示。
はぁ!?じゃあ何でさっき俺は友人と・・・

167 :本当にあった怖い名無し:2007/02/19(月) 02:08:08 ID:HMM22o2a0
・・・ピリリリリリリ!!ピリリリリリリ!! 
今度は友人からちゃっかり着信である。何だこの未体験ゾーンは!? 
「もしもし!?」 
『あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』 
絶叫。友人の声ではない。受話器から耳を離す。それでも続く女の絶叫。 
常人の肺活量では続かない長さである。友人が無事では無いことを悟る。
「くっそ!」
今すぐ友人のもとへ行かねば、取り返しのつかないことになる! 
もう遅いかも知れないが・・・ 
『あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
―プツリ・・・ 
絶叫が響き続ける携帯を切り。俺は橋の反対側、友人のもとへ走った。 
欄干の傍は通りたくないので、歩道ではなく車道のど真ん中を疾走する。 
数少ない街頭の間と間にある、その深い闇に何かが潜んでいそうで、走りながら恐怖で気が狂いそうだった。 

172 :本当にあった怖い名無し:2007/02/19(月) 02:26:37 ID:HMM22o2a0
そして、橋の中間点に差し掛かった時、正面の暗闇から黒い影がすごい勢いで接近してきた。 
―!!!
友人を助けることなど一瞬で忘れ、来た道をダッシュで引き返す俺。 
あの影ナニ!?どんだけ奇襲かけてくんだよ!! 
うおおおおおおおおおおおお・・・!!
走りながら涙と鼻水と小便を垂れ流すような経験は、後にも先にもこれが最後であってほしい・・・ 
影はまだついてきており、足音が聴こえる!が・・・
「お~い!何で逃げんだよw」
背後から友人の声である。影の正体は友人であった。 
門限をとっくに過ぎていたため、怖いながらも意を決して、こちら側に走ってきたそうである。 
「イヤお前・・・さっきの電話で来てくれ来てくれ言ってたくせに・・・しかも圏外で・・・出たら絶叫って・・・」 
今度は俺が激しくテンパる番であった。
「電話って・・・自転車のカゴの、バッグの中だけど?」 
コイツこんな状況で脅す気か?とでも思ってのか、不審そうな表情で答える友人・・・ 
・・・え?・・・だとすると・・・俺が友人だと思って通話してたのは・・・ 


198 :本当にあった怖い名無し:2007/02/19(月) 15:24:48 ID:HMM22o2a0
それから俺達はとぼとぼと二人で歩いて帰宅した。
自転車を失い、小便臭い俺と肩を並べて歩く友人が不憫でならなかった・・・ 
疲れきったお互いに会話は無い。 
―夜道を歩きながら考える。 
もし・・・橋を渡りきっていたら一体何が待っていて、俺はどうなっていたのか?
また小便を漏らしそうになった。が、漏らす小便も既に尽きていた・・・ 

「ねぇ、あの橋ってさ、昔から良くない噂とか歴史とかあった?」 
後日、俺は地元の地理と歴史に詳しい爺ちゃんに訊ねてみた。 
「あぁ、あの周辺は、コレなんだよ・・・」 
爺ちゃんはそう言って、親指を曲げて四本指を差し出した。 
―四ツ、四ツ脚・・・ 

199 :本当にあった怖い名無し:2007/02/19(月) 15:29:56 ID:HMM22o2a0
かつてそう呼ばれた身分の人々がいたのを、皆さんはご存知だろうか?今もいるけどね・・・ 
まともな職に就けないそういった人々が、当時どんな仕事をしていたか? 
『四ツ脚』
つまり、食用の家畜を扱う仕事の他に、俺の地方では河原の砂利拾いが主だったようである。 
良質の河砂利は、建設業者に高値で買取られる。
当然、骨身を削って砂利拾いをする輩が現れる。 
だが、当時のそこはダムさえ無かった流れの荒い河原で、年間を通して水死者が多発したそうである。 
その後、ダムが建設され水量が安定したのを機に、一つの橋が架けられた・・・ 

以上が爺ちゃんから聞いたハナシ。 
更に不気味だったことが一つ・・・
あの日橋の上で拾った謎の紙。
それを俺も友人も、知らず知らずのうちに、ポケットに詰めて持って帰ってきていたのである。 
紙は二人で燃やして、自宅の玄関と部屋に軽く塩を撒いておいた。
現在、特に変わったことは何も無いし、
爺ちゃんの話してたことが、橋の怪奇現象と関係しているのかも分からず仕舞いだが、 
とにかく俺も友人も、二度と車以外であの橋に行くことはなくなった。

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