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【長編洒落怖】姪と人形

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409 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 23:47:24 ID:elI4xrjkO
(え) 
家鳴り、その殆どは排水溝や、近くを走る高速道路などの振動が、ある特定の場所に伝わるもの、
つまり一種の共鳴現象だ。 
だが、そうとも言えない、とても共鳴とは言えないほどの揺れを体験した人もいるという、日本にも外国にも。 
家鳴りとは違うが、昔、山に行ったとき、麓の河原の側で一泊した 
オレ達以外に野営している者は付近にはいなかった 
近くに古びた神社があった 
閂が差し込んであるだけだったので、面白半分に友人と忍び込んだ 
暫くして板壁の左右、後ろを、モノ凄い勢いで叩かれた、地震なのか、獣でも壁に突っ込んだのか、今もって解らない

とにかくオレは部屋に戻ると、机の上に念のために水を入れたコップを置いた 
その時に、出来ることがあれば、取り合えずやってみる主義だ 
一時間程して姪が戻ってきた 
スーパーの袋に、母屋から桃を貰ったと、幾つか入れて帰ってきた、たぶん祠に供えてあったのと同じ桃だろう 
何故か姪は、夕食を前にしてそれを剥けとせがんだ 
よく冷えた桃だったが、一つだけヌルイのがあった、祠に供えてあったものだろうか。

410 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 23:58:49 ID:elI4xrjkO
(て) 
その晩、コップの水に波紋はでなかった 
今日もオレの部屋で寝る甥と姪は、始終、興味深げにコップの表面を眺めていた 
姪は、今日は人形を持ってこなかった、部屋に置いてきたと言う。 

翌日、姉と、姪を連れて病院に向かった 
病院という所は意外と病気を貰うところで、姉は姪を連れて行くのは嫌がったが、
何故かオレは目を離すのが不安で、強いて連れて行くことにした 
甥は母屋に預けた 
何となく、誰かをこの家に一人で残しておくのが不安だった 

検査の結果を説明された、この時はオレも一緒に病室に入った 
姪は待合室に残したが 
医者の説明では、確かに肝臓が少し腫れているようだと言う 
しかし血液検査では何も見受けられなかったとも 
当時のその時点では、肝炎もなく、しかし急激な発症例からすると、肝吸虫症、肝ジストマ症が考えられると言う 
胆管に寄生する寄生虫らしい 
即、検査入院を勧められたが、事情を話して明日にしてもらった 
今となっては、その判断は後悔している。 
家に戻り、明日の入院の用意をしている時、姉はいきなり倒れた 
オレは救急車を呼び、甥を母屋に走らせた 

義兄が到着したのは、その晩も更けようとしている頃だった。

411 :本当にあった怖い名無し:2007/08/23(木) 00:36:22 ID:N0Cvsa28O
(あ) 
義兄は既に病院に立ち寄ってきたそうだ 
担当医はいなかったが、看護士の話では、便検査が必要との事、
便採取は姉が倒れていた間に済ませており、明後日には結果が出るとの事 
そして今は命に云々という状態ではなく、比較的落ち着いてるとの事 
それを聞いて義兄は取り合えず家に戻ったわけだ 
一通り、話が一段落した後、オレはあの神社の事を彼に聞きたくなった 
場合が場合だから、オレの思った事をそのまま聞いたならば、
こんな時になにをバカな事を、と一喝されるのは分かっていたから、なるべく婉曲に、世間話に織り交ぜて。 
それでも不快かとも思ったが、以外にも義兄は話に乗ってきた 

以下、義兄の話 
あの神社の奥、一般に神の場所とされている所に、井戸があるそうだ 
人はその水は飲むことが出来ない、所謂、神の水という事らしい 
その井戸の傍で、義兄の同級生、当時、小学五年生くらいだったらしい、が猫を捨てたそうだ 
捨てたというよりも、箱に入れて、そこで育てるつもりだったらしい。 
その同級生は、仲のよかった義兄に、その事をそっと耳打ちしたらしい 
義兄も二、三日の内にはその猫を見に行くつもりだったらしい。 


414 :本当にあった怖い名無し:2007/08/23(木) 01:56:08 ID:N0Cvsa28O
(さ) 
猫に関連する話 
その話、当時の地方新聞にも書かれた事なので、あまり詳しくは書けない 
ただ、義兄は、その日もその同級生が猫に餌をやりに、あの神社に行くことは知っていたそうだ 
だけどその同級生は、その日、家に戻らなかったそうだ 
当然、男子行方不明、学校でも朝礼でその話が出たし、新聞にも載った 
両親も、いずれは見つかると思うだろう、
ずいぶん長い間、その土地に住んでいたらしいけど、やがて諦めたのか、他の土地に引っ越したらしい 
で、猫の事だが、箱に入れられた猫は、首が切断された状態で、箱に納まっていたそうだ 
もっとも、猫の件は、新聞ネタなのか、クラスの怪談ネタなのかはっきりしないが 
だから、義兄に言わせると、あの場所は人が入ってはいけない場所だそうな 
そう言われると、余計に入ってみたくなる、オレの性分 

432 :本当にあった怖い名無し:2007/08/24(金) 02:38:23 ID:Qir2PlimO
(き) 
ここで、病院の話に出た肝吸虫症について、雑学程度だがも少し書いておきたい 
この寄生虫、まずタニシなどの貝に寄生するそうだ、
そしてその貝を食べた鯉やフナなどを加熱せずに食べると、人間を宿主として胆管に留まる 
潜伏期間は6~8週間位だそうで、発症しても初期の頃は自覚症状が無いことが多いそうだ 
但し重度になると死亡するケースもある 
日本ではあまり例がない病気だが、
韓国から中国、マレーシア、カンボジアと、中央、東南アジア圏によく見られるらしい。 
8週間前と言えばオレが来る前の事だが 
しかし海外に旅行したとは聞かないし 
食べ物にしても、姉は元来、生物はあまり口にしない方で、まして川魚の洗いなどは食べないだろう 
子供の頃、父方の実家に行くと、よく鯉濃を出してくれた 
交通の便が悪い、山の中の事だったから、せめての滋養、ご馳走だったのだろう。 
だが姉は、生臭い、泥臭い、と言ってガンとして食べなかった。 

義兄がシャワーを浴びるため、話は一時中断した 
浴室に向かう前に二階に上がったようだ 
書斎に荷物を置きに行ったのと、今日もオレの部屋で寝ている子供達の様子を見に行ったのだろう

433 :本当にあった怖い名無し:2007/08/24(金) 02:58:55 ID:Qir2PlimO
(ゆ) 
その夜、妙な所からあの人形の出所がわかった 
あの人形は、おそらくは、棄てたものではないそうである。 
あの人形の所有者は、あの神社のはずだ、と。 

義兄はシャワーから戻ると、ビールを出して再び話し始めた 
今度はオレが尋ねるというより、彼がオレに畳み掛けるといった感じだ 
姪の枕元にあった人形を見た義兄は、まず、あの人形はどうしたのかと聞いた 
オレが答えるより早く、彼は、あの人形を見たことがあると言った 

子供の失踪というのは、身代金の要求とか、表沙汰になるもの以外にも、けっこうあるそうだ、
実数はオレは把握できてはないが。 
青年の場合ならば家出、駆け落ちがかなりの割合である 
だがそれが比較的低年齢、小学生ぐらいの場合には、親、警察等が先ず考えるのは、事故だ。 
義兄の同級生が失踪した当時、まず側にあった井戸が調べられた 
神主の立ち合いのもとで。 
次に拝殿、社の中だ 
同時に、その時同級生が社の奥で猫を飼ってる事を知っていたのは、おそらく義兄だけだったのだろうから、
当然、彼も重要な参考人として、警察官と共にその場に同行していた。 
その時に見たそうだ、社の中を。

434 :本当にあった怖い名無し:2007/08/24(金) 03:04:57 ID:Qir2PlimO
(め) 
中央に銅鏡のようなものが有って、その前に黄色い稲の穂のようなものがあったそうだ 
そして、そのさらに奥、左手に一段低い台、というか棚の様ものがあったそうだ 
その棚に、20体ばかりの人形が飾ってあったそうである 
顔の造りはまちまちで、中には御河童頭の男の子の人形もある 
しかし何れも着物を着ていて、今にして思えば、何となくだか、昭和の初期か大正くらいのものではなかったか、
そう言っていた 
確かにあの人形も、オレの祖母の家あったものと同じ、大正時代か昭和の初期の作、
顔は少し扁平だか、何やら気品のある顔立ちだ 
作りも今の人形より精巧なような気がする 
勿論、オレはその辺りのことは素人なのだか。 
後で知った事だが、人形というのは、着物をめくると、腹の部分に、その作者の名前が書いてある事が多いそうな 
それを知っていれば、あるいは何かの手掛かりにはなったかも知れない

435 :本当にあった怖い名無し:2007/08/24(金) 03:11:52 ID:Qir2PlimO
(み) 
義兄の話に戻す 
あの人形、顔の作りも、着物の柄も、あの時、棚の一番上の、端にあった人形によくにてると。 

義兄の年齢から考えると、当時の件は昭和の40年代も半ばの頃だろう 
当時の日本の農村には、まだ肥壷なんてものが当然あった 
あれ、深さが二メートル近くあって、けっこう深いんだ 
大抵は、木の蓋がしてあるのだが、中には蓋もして無く、表面がカパカパに乾いていて、
まわりの地面と区別がつかなかったりする 
だから、神社からその子の家までの経路、そんな所にも捜査が加えられた 
しかし、その子の行方は杳として知れなかった 

よく憶えてくれていたと思う、当時の事を 
一因として、義兄は、オレと同じメモ魔だったから 
一方は、それを武器にして出世したが、また一方は、それがアダとなり、離婚、退職(オレ様)した 
話の本筋とは違う、オレの愚痴。 
とまれ、話は人形に戻る 
その社の人形を見たとき、神主が大雑把に説明してくれたそうだ 
その人形の由来を。 

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