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【洒落怖】10の14乗分の1

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734 :9/12:2009/07/13(月) 00:45:35 ID:yzLus+8HO
ヨッシーは大声で暴れている。山奥とはいえ、夜の10時、警察が来ては面倒だ。
「ヨッシー、うるさいよ!静かにしろよ!もーなんでこんな身障連れてきたんだよ!くそ!」
俺は連れてきた事を後悔した。
ヨッシーを見ると騒ぐ一方で、苛立ちが増大してしまった。
みんなに悪いような気がして、冗談のつもりである提案をしてみた。
「ヨッシーを木に押し付けてしまおうか?うるさいから四次元に葬ってやろうか?」
軽い冗談だ。
けれど…
「おー!いいね!こんなお荷物は四次元に葬ってしまおう!」
「どうせ生きていても役に立たないよ葬ってしまおう!」
やんややんやの大騒ぎ。
ヨッシーコールまで起きてしまっている。
ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー
四次元なんて嘘なんだし、ヨッシーをビビらせておとなしくさせるだけだ。
俺もテンションが上がってしまって、ヨッシーの腕を掴んだ。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、オジサンがオジサンが…僕嫌だよ」
オジサン等と訳のわからんヨッシーに怒りさえ感じて、腕を力強く掴んだ。
反対の腕を友達が掴んだ。引きずるように木に向かって歩いていった。
ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー

736 :10/12:2009/07/13(月) 00:47:09 ID:yzLus+8HO
「嫌だよーああああああああ」
足をバタバタして抵抗するヨッシー。
仲間が懐中電灯をぐるぐる回して雰囲気を盛り上げる。
ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー、ヨッシー
もはや後には引けない。
四次元の木に後一歩の所まで来た時、友達に目配せをして力強くヨッシーを木に押し付けた。
フッと軽くなったような気がした瞬間、懐中電灯が消えて真っ暗になった。
何かにつまづいて転んでしまった。
「痛!おい、消すなよ!こら!」
「消してないよ!…消えた!」
パンパン!…パンパン!
懐中電灯を叩く音が数回した後、フッと灯りが付いた。
「あれ?ヨッシーは?」
いない?!真ん中にいるはずのヨッシーがいない?!
反対の腕を掴んでいた友達も何故か転んでいて、キョトンとしている。
「いない訳ないだろ?」
「あいつイタズラしてんだよ!おいヨッシー、ふざけんなよ!出てこいよ!」
灯りがつくまでは数秒、ヨッシーはその間に茂みに隠れているに違いない。
俺達は懸命に探した。
「おい、ヨッシー、出てこい!」
「もうやめよう、謝るよ、出てきて」
「悪かった!ヨッシーごめん。頼む出てきて!」

738 :11/12:2009/07/13(月) 00:53:29 ID:yzLus+8HO
俺達は青くなった。
ヨッシーは悪ふざけをして、その辺の崖から転落したのかもしれない。
「お前があんなアホ連れてくるから悪いんだぞ?」
俺は後悔した。
ヨッシーはマジで大ケガ、いや、死んだかもしれない。
ヤバイ…ヤバイ…。
「うん。俺の…責任だ。とりあえずヨッシーの家に行って、お母さんに説明しよう。それから警察に届けよう。
俺の責任だ」
俺達は急いでヨッシーの家に帰った。
山道を15分、バイクで一時間、ヨッシーの家に到着した。
「おばちゃん、おばちゃん!ヨッシーが大変な事に!ごめんなさい!」
ヨッシーの母ちゃんは、俺達の勢いにびっくりしたようだが、直後にとんでもない事を言った。
「どうしたのこんな遅くに?義彦ならさっき押し入れから落ちたみたいで、うーうー唸っているよ。二階で」
え?な・ん・だ・っ・て?俺達は訳がわからず二階に行った。
そこには紛れもなくヨッシーが居た。
「おい、ヨッシー、ヨッシー!お前どうやって帰ったんだ?え?」
ヨッシーは何故か全裸だった。体中に傷があって、涎をだらだらと垂らしている。
「オジサンがね…僕のね…えへへ…お前らしらないぞ?オジサン怒ってたぞ?」
「ヨッシー、オジサンって誰なんだよ?え?オジサンって?頼むよ、答えろよ!」
俺は何故か半泣きになってヨッシーを揺さ振った。
「えへへ、えへへ」
ヨッシーは答えない。

742 :12/12:2009/07/13(月) 00:56:11 ID:yzLus+8HO
お母さんの話を聞くと、一時間位前に二階でドスンドスンと大きな音がして見に行くと、
ヨッシーが全裸でヘラヘラ笑っていたという。
一時間前って…ヨッシーが消えた頃じゃないか?
「この子…もう駄目なのかな…みんな…友達でいてあげてね」
俺達は何も言えなかった。
翌日の日曜日の昼間に、俺達はもう一度四次元の木に行ってみた。
何か手掛かりがあるかもしれない。
四次元の木の周りには何もない…
すると一人が何かを発見して叫んだ。
「おい、あれを見ろよ!」
指を差した場所は空だった。
四次元の木の頂上付近、30メートル位の場所に…
服が絡みついている。
「あれ…ヨッシーの服だろうが?」
間違いない。昨日ヨッシーが着ていた服だ…。
一体どういう事だろう?
俺達はいくら考えても解らなかった。
ヨッシーは四次元に迷い込んだのか?
オジサンとは誰だろうか?いくら考えても解らなかった。
あれから15年…ヨッシーは通院では済まなくなって、今は面会不可な場所に居る。
俺達あの時は犯罪者になった気分だったけど、10の14乗分の1位の確率で木だって通り抜けられるんだよね?
だから…偶然じゃなく必然だったんだ。
そう自分に言い聞かせているんだ。

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